こっそりサンタと野次馬のクリスマスイブ

「死ぬかと思った……だけどとりあえず物は買えた。ありがとうMr.マンボウ。金もギリギリだったなあ来年も頑張らねえと」

ほっと胸を撫で下ろしながらラッピングされた箱を持ちながら船内を見回り。今日は12月24日、クリスマスイブ。先日準備をしたプレゼントを姫の枕元に置いて行く日であった。周りに誰もいないかを厳重に見回りながら慎重に忍び足。

「そうですわねえ。まるでお嬢様に貢ぐ愚民のようで大変ですわね」
「我儘姫の側近って大変そうだな」
「うるせえ!ってなぁ!?」

しかし彼の忍び足は無駄となっていた。振り向くと唐突に神出鬼没な2人ジョーとユウノがニヤニヤと笑いながら立っていた。

「ほらーミコちゃん起きちゃうよー?」
「うふふそういうのはもっと早く言ってくれれば協力しましたのに」
「ねー」
「やめろお前たちには関係ないし俺はただ見回りを」

そそくさと箱を後ろに隠すがそんなことにも気にしないのが年長者達。ニッコリ笑顔で逃げるキムを捕まえる。

「可愛らしい箱を持って見回りとは可愛らしいですわね」
「いやあさっきまでの動き見てるとお嬢様の部屋へ行く不審者にしか」
「違いますー」

唇を尖らせる。ユウノはその反応に笑っている。

「いつからあげてるの?」
「だから違……もういいや。造られてミコに出会ってからだ」

誤魔化しの回答しても信じてくれないのは自明の理。もう言ってしまおうと肩を落とす。

「あらまあ。ドクは?」
「アイツが『家に住んでるならともかくマンボウの宇宙船には煙突なんて付いてないからサンタが来るわけないだろ渡された手紙もどこに出せば』と言ってたから適当言って手紙受け取って読んで枕元に置いた」
「アームさん……」
「あの人本当に信じてたのねサンタを……」

遠い目をしている。ドクの優しさはどこかおかしいと昔首を傾げていたがその考えは間違っていないようだと軽くため息を吐き言葉を続ける。

「存在しないことくらい僕は知ってますよ。アームもばかも頭が悪すぎるだけだし。でもまあばかを無下には出来ないというか何というか。胸が締め付けられて。それにばかが喜ぶ顔を見れるならちょっとくらい頑張ってもいいじゃないか」
「おっこれはいい情報聴きましたよ奥さん」
「本当ですわねえ奥さん」

2人は目を見まわし何やら変なことを言っている。当然なことを言ったのだがもしかして失言してしまったか?とこめかみを押さえる。

「何でそんな顔してこっち見てるんだ見世物じゃねえんだよ年寄り共は早く寝ろ」
「ドクもそうですけどこの人らは何故口が悪いのでしょうね」
「兄弟だからじゃね?」
「……僕は行きますから」

これは会話を続けていたら朝日が昇ってしまう。早く姫の部屋に行こうと歩き出した瞬間、「あ、ちょっと待ってキム」とユウノに止められてしまう。

「?何だアンタもそう行きかけた人間を止めるのか?」
「アンタも、というのは分かりませんが、貴方、どうやってその鞄を手に入れたの?」
「?普通にデパートまで行ったが?まあMr.マンボウとかいうふざけた人間に助けてもらったけど」
「そう……あ、もう行っていいわよ」
「いってらっしゃーい」
「畜生アイツらいいネタ見つけたって顔してやがる。もう付いてくるんじゃねーぞ!」

ギロリと睨み踵を返し再び歩き出した。

キムコンがその場を去った後。ジョーは首を傾げユウノに声をかける。

「ねえユウノさっきの質問はどうしたの?」
「……キムがメルク星のデパートに行って行列に弾き飛ばされたところまでは水晶で見れたのですけどそれ以降キムがデパートから出て行くところまで覗くことが出来なかったんです。声も聞こえませんでしたし」
「それは意外だ。ジャミングでもされたのか?」

ユウノはキムがプレゼントを買いに行くところを見届けてみようと遠見の魔法と耳を澄ませていた。しかし、ある一定時間、それはキムがプレゼントを買っている所は視界が歪み、音も消えてしまっていた。その後ノイズを潜り抜け次に聞こえたのは宇宙船が飛び立つ音。自分の魔法を過信しているわけでは無いがこれまであの体験をすることは無かった。

「今までこんなこと無かったんです……だから気になって聞いたんですよ。Mr.マンボウ……どういう存在なのでしょうね」
「うーん俺もちょっと情報収集してみるよ」

キムが言っていた奇妙な単語に2人はうーんと唸るのであった。