世界は広かった、彼にとっては当然驚くものだった。
ブルーベリー星から宇宙船が飛び、数年。彼は数々の『事実』を見た。その中でもある所では【女神】とやらに選ばれ、腕におかしな【ディスク】を装着し、宇宙の破壊を巡る戦いに巻き込まれた時が一番印象に残っている。
イメージを膨らまし発生させる【サークル】をぶつ合うDJバトルを通し数々の出会いや別れを繰り返した。太古の【祭り】、レイヴの発生、ハードコアタノシー教団の総帥との遭遇。彼との最後の【共鳴】により女神たちの気まぐれによる宇宙の破壊を防ぐことに成功した。
光が降り注ぎ盛り上がりは最高潮を迎える。しかし――
「夢だったのだろうか」
眩い光が止む。しかし目の前に広がるのは静かで何もない荒野の地だった。
「メガミ! ピアス! おいレッドアリス!!」
名前を呼んでも自分の声が響くだけだった。誰も何も返ってこない。巨大な会場はどこに行ったのか。隣にいた帝王は、客は、友人はどこに。少年は1人ただぽつんと立っていた。
「は、はは……」
孤独な自分が見た夢だったのだろうか、そうつぶやいた瞬間、頭に激痛が走る。
「い、いってぇ! 何するんだ青いの!!」
自分の頭から一切離れることのない液体金属のひよこが怒ったのだろうか、突いている。手で掴み、落とそうとする。しかし相変わらず離れることはない。
「分かってるっつーに! お前がいるからな! はいはい!!」
孤独という表現は間違えてる。1人と1匹の旅。ピンク髪の姫に託された液体金属ヒヨコという不思議な生物がずっと頭上にいた。自分の言葉が分かったのだろうか。突くのをやめ、またいつものように鳴きもせず偉そうに頭の上を占領する。
彼はため息をつき、青い生物に話しかける。
「なあ、さっきまでのは夢だったのか?」
ひよこは何も喋らない。しかし何か自分に伝えたのは分かる。
「――そうだな。俺の見たものは俺にとっての現実、そう言いたいんだよな?」
何も喋らない。しかし彼にとってなんとなくだが肯定とも取れた。
またいつものように他の星を巡る旅に戻った、というのが事の顛末である。ふとなぜ旅しているのだろうと思うことがあった。それは外を知らない姫の為、そして弟の為だと自分に言い聞かせる。直後また自分には他に何か目的があったようなと疑問を持つが思い出せない。ならばそれほど大事なものではないのだろう。無駄に正義感のある偉ぶった姫を手伝ってやらないといけないのだから。
「早く、戻らないとな」
ポツリとつぶやく。頭に乗っている生物は今日も鳴くことはない。
>>あとがき
もう入手困難な媒体のものだからどこまで話に盛り込んでいいのか分からないなあというぼやき。
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