短編|銀の女の結婚相手

「ユウノの結婚相手ってどんな人だったの?」
 鍵を首に下げた男の一言にミコ、キム、ユウノは顔を見合わせた。
「あーそっかカーギィはまだいなかったんだっけ」
「懐かしいなぁ」
「そんな頃もありましたねえ」
「え、何で皆他人事なの? ユウノも自分の話だよね!?」
 ジョーの慌ただしさに3人は笑っている。
「そんなに気になるのか? だよなぁユウノさんの過去が気になるんだよなぁジョー?」
「このこのぉ」
「ち、違うってば!」
 顔を赤くしながら否定するジョーをミコとキムは笑いながら小突く。ユウノさんはきょとんとした顔で言う。
「別に隠していたわけでもないですしお話しますよ」
 銀色の髪を揺らし口元を隠していた扇子を膝の上に置く。
 そして懐から小さなデバイスを取り出しスイッチを押すと光を放ち壁に絵を映し出す。
「この絵は?」
「幼稚園のころに書いた自分の将来の夢です。あの頃にはもうイケメンな王子様に恋して結婚したいって思ってたわね」
「へー」
 灰色のクレヨンで塗った髪の毛、黒色の服と並ぶ女性の絵。3人は子供特有のぐちゃぐちゃな絵をぼんやりと見つめる。
「もしこの頃からイメージしていた王子様が自分の目の前に現れたらどうします? 理想の見た目、少し憂いを帯びた優しい目つき、穏やかな喋り方。そんな人があの日父親に紹介されたのです」
 ジョーは喋っている彼女の顔を確認してみる。眉一つ動かさずじっと絵を見つめていた。
 辛くないのだろうか、口に出そうと思ったがやめておこう、宿主は止めてやる。
「この方と結婚することは出会った時には決定していました。家がどうなっているのか分からないまま自分だけの力に怯えていたあの頃。私はその方に部屋から引っ張り出されたのです。いい方でしたが……あの人は私を見ていなかった。もっと遠くの存在をずっと見つめていた目を今でも覚えています。そして結婚前夜、ミコ達と出会ったんですよ。それだけです」
 そう言うと再び扇子を開き口元に置いた。これ以上語ることは無いようだ。
「あ、そういえば最近地球で流行ってるものですごい欲しいやつがあるんだよねーきむとカーギィで買ってきてよ。はいこれ写真」
「……えぇ……」
「この空気で僕たちをパシリにするんだなこの女……」
「ほら男たちはとっとと外に出なさいよ!」
 ミコはキムとジョーを部屋から押し出すように促す。そしてミコはジョーの耳元でぼそりと喋る。
「ユウノについてはドクの方が知ってるわよ。私達ユウノが結婚するタイミングであの星に降り立つたの。なんて出来すぎてるストーリーだって思わないかしら?」
「え、あ、えぇ?」
 部屋の外に出たのを確認すると彼女は扉を閉めてしまう。
「放り出されてしまった」
「そうだな……あードクの部屋にでも行くか? 今いる場所から地球とか何日かかると思ってんだよ、ドクにそれっぽいやつ作らせようぜ」
「えぇ……」
 その時のキムの笑顔は非常に悪人だった、鍵を首に下げた青年は後に語る。

「偶然、だったのかなあ俺達が集まったの。今まで考えたことが無かった」


>>あとがき

白ユウノさんの話でした。これから彼女の過去を書く予定なので導入として入れてみました。

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